賞名 |
氏名 |
山頂名 |
題名 |
住所 |
講評 |
最優秀賞 |
村上 敏幸 |
雁ヶ腹摺山 |
躍動 |
山梨県大月市 |
最高位入選にふさわしいみごとな出来栄といえる。ただ、少々残念なのは画面の色調に透明感が乏しいこと、いわゆる濁りによる色調の冴えがもっとクリアーであって欲しかったことだ。だが、画面構成はすばらしく、中央部の雲の盛り上がりもよい。この雲がもう少し大きかったら、と欲が出るところだ。富士山頂部の雪の白い輝きはもっともすぐれた点で、これがために選出された、といってよい。作者はこの作品のほかに九鬼山と高川山と2点の入選があり、さすが今回最高位を獲得しただけある充実ぶりである。しかし、今回は他にも入選2点の作者が3人もあり、こうした上位作者に引きくらべ、他の作者はもっとがんばって欲しいところである。
いずれにしても、村上氏の充実度は異様なほど高度であり、来期もぜひ、この充実ぶりを保持して応募してほしいものである。
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推薦 |
山崎 勝孝 |
牛奥ノ
雁ヶ腹摺山 |
雲湧く |
神奈川県藤沢市 |
画面の調子、色調、作品の格調度、すべてに文句のつけようがない出来栄えであるが、ややおとなしすぎた感があるのは残念で、そのため最高位に一歩おくれをとった。題名も同様におとなしすぎ、「雲湧く」ではこの雲の状態にふさわしくない。それに左下方に山の尾根があるため、富士山の高さがやや減じて見えるのも残念だ。選者が若干トリミングしたが、こうした場合、最初からもっと長焦点レンズを使って切りとるか、さもなくば引き伸ばし時にトリミングする必要があろう。
「題名」はできたら「夏の朝」的なものを考えた方がよく、さらに雲の動きをよく見定めて躍動感を加味することが重要な課題となろう。夏の富士山を作品としてまとめるにはまず第一に雲の動き、形、輝きであり、富士山の山肌はつぶれたとしても、そちらの方の表現に力を注ぐことが何よりも作品にプラスとなることを忘れずにいたい。 |
推薦 |
津 秀俊 |
岩殿山 |
夕雲光る |
山梨県大月市 |
常に上位入選を果たしている実力作家であり、今回も遺憾なくその実力を発揮した作品であるが、右方と上方が少々余分であり、そのため富士山が画面中央に位置しすぎて動きが損なわれたため、選者がそれを参考的にトリミングした。しかし、夕雲の輝きはさすがに美しく、富士山頂の点となって光る小さな巻雲も存在感を与えている。
夕雲は吊し雲の一種であるが、やや風が弱かったか、完全な吊し雲の形とならず、そのため力が不足した。これで中央に立ち上がる吊し雲となったら、さぞ美しく迫力のあるものになったろうと残念に思う。しかし、そうした場合は横位置でなく、縦位置とするのが望ましく、それが常道である。そうした場合、横位置は大きく広い画面の表現に適し、縦位置構図は奥行と動きを表現するのに有利だということを、よく理解し、時と場合に応じて撮り分けるようにしたい。 |
特選 |
山下 政明 |
ハマイバ |
霧雲晴れて |
神奈川県秦野市 |
左手前から右上へと段階的に、畳かけるように構成された構図は非常に効果的で、富士山の高さをより高く見せる。ことに一番下段の黒い山が大きくなりすぎなかったところに全体のバランスをそろえる意味があり、高くぬきん出た富士山のあまり白く輝やいていない雪の質感を助けている。欲をいえば、もう少しコントラスト-ことに富士山の-が際立っていたら、と思うが、格調ある作品。 |
特選 |
加藤 公男 |
百蔵山 |
朝日に輝らされて
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山梨県大月市 |
富士山頂上の長くのびた笠雲、山頂のみ光に照らされた富士山。その下部は濃いガスに埋められている。一風変わった感じではあるが、捨て難いムードを醸し出している作品。欲をいえば、もうすこしアップにして雲を左右ぎりぎりまで切り、下方の山の影をなくした方がより神秘的な感じが表現できたと思う。作者はこのところあまり出品していなかったが、これを機会にどんどん応募してほしい。 |
特選 |
二本木 勝 |
岩殿山 |
大雪の朝 空青く 落雪の瞬間 |
東京都江東区 |
今年度は、というより、昨年度から、この一帯は降雪度が重なり、雪量も多い、たかだか634メートルの岩殿山もその影響でこうした好条件に恵まれる。街並みを下方の枝でかくし、大きく空を入れこみ、そこにはたわわな雪をつけた枝を垂れ下がらせている。全体のバランス、画調も美しく、みごと特選を射止めた。やはり、チャンスをのがさなかった、という熱心さが栄光につなっがている。 |
入選 |
大戸 康世 |
雁ヶ腹摺山 |
雲湧き出づる峰 |
山梨県大月市 |
これも少々焼きすぎの気味があり、全体に暗いイメージがあって、秋空の爽やかさが損なわれてしまった。それに題名が意味をなしていないことだ。雲湧き出づる峰はどこにあるかと考えさせられてしまう。こうした場合は「秋空に雲さわやかにたなびく」的にして、それに合わせて画調を整えることが望ましい。いずれにしてももっと明るい調子とすれば全く異なった素晴らしいものとなろう。 |
入選 |
奈木 正次 |
姥子山 |
秋色 |
山梨県大月市 |
一番山頂であり、一番の人気山頂である雁ヶ腹摺山に付随した山でありながら、あまり作品が集まらないのは残念である。この作品の前景も雁ヶ腹摺山とよく似ていて、奥深い感じは他の山に数等勝っているのだが・・・。 この作品の惜しい点は富士山の積雪の白が少し飛んでいることで、これは手前の山肌との露光値との関係であるが、若干の工夫が必要と思われる。少々残念である。 |
入選 |
谷口 一只 |
牛奥ノ雁ヶ腹摺山 |
雲を染めて |
埼玉県加須市 |
これまた思い切って上空を大きく捉えた構図であるが、下方の樹々の梢を見ると適切な判断と思える。それに上空いっぱいにひろがった雲が朝焼けの色付きでまことに美しい。欲をいえば中間部の雲と上層部の雲との種類の相違で、上空が少し軽くなったのが惜しい。だが、この場合、これ以上の条件を望むのは少々欲張りすぎとなろう。それにこの撮影地の条件から見ると上乗であろう。 |
入選 |
谷ア 耕史 |
小金沢山 |
雲海沸き立つ |
大阪府大東市 |
題名には少々そぐわない画面であるが、富士山を大きく入れ込んだために、下方との空間が大きく空き、その分だけ富士山の高さが増した。雲海は沸き立つ、といった感じから遠く、雲に光の乏しいのもあまり好条件とはいえないが、画面全体の調子がうまくそろったことで秋という季節感がよく表現された、これで富士山に新雪でもあれば、と思うところだが、少し欲ばりかも知れない。 |
入選 |
内藤 均 |
大蔵高丸 |
雪後 |
山梨県南アルプス市 |
しっかりとした画面構成力を備えている作者であるが、今回は少々それがうまく行っていないようだ。雪の積もった枝にそれぞれの分離がうまくおこなわれていない。少々ピントも甘いようだ。作者の力から見るとちょっと残念である。少々あわててシャターを切った感があり、こうした場合こそ、しっかり落ち着いて撮影手順に終始しなければならない。 |
入選 |
愛澤 和弘 |
ハマイバ |
深紅の輝き |
埼玉県所沢市 |
あまり好条件でないと思われる場面をみごと捉えたのは、不断の冷静さの持続であろうと思う。全体の分量配分は良好であるが、中間部の雲の動きはともかく、少し小さすぎたのが残念なところだ。それとややピントが甘く見えるが、これはスローシャッターによるカメラブレと考える。カメラを上からしっかり押さえて、静かにレリースを押すことをマスターすべきである。 |
入選 |
小谷 哲朗 |
滝子山 |
暁の霊峰 |
三重県松阪市 |
姥子山同様、撮影されることの少ない山頂であるが、それは姥子山以上にアルバイトがきついからであろう。そのかわり入賞のチャンスは数等有利といえるのだが・・・。作品の構図・バランスは良好であるが、やや発色に濁りがあるのはどうしたことか。露光不足が影響しているのかも知れない。もう少し時間的にあとの方が好発色となったと思われる。少々残念であった。 |
入選 |
奈木 正次 |
笹子雁ヶ腹摺山 |
山稜にのぞく |
山梨県大月市 |
この山は秀麗富嶽十二景中、最も不利で撮りにくく、形もさほどでなく、したがってあまり積極的に撮影されない。だが、こうした難しい山ほど取り組み甲斐があり、他に競争者が少ないので入選率も高いのだ。
ただ、この作品も少々露出不足の気味もあって発色に濁りがある。他に競争者がいないのだから落ち着いてじっくり取り組みたいものである。
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入選 |
瀬沼 茂雄 |
奈良倉山 |
流れる雲 |
東京都福生市 |
撮影対象として、もっとも遠方に位置するため、不利な山であるが、その分アプローチが有利なのでよく登られる。富士山の形は遠方にあるため、より美しく整っているが、やはり前景や雲を利用しないと作品になり難い。
この作品は美しく晴れた春の候、上空の雲もなかなかに美しい。だが、富士山が画面の中央線に位置しているのが難。下方を切って上空主体に構成した方がよかったと思う。 |
入選 |
高宮 徹 |
扇山 |
木々染まりし上に |
東京都八王子市 |
朝の色づいた光に、樹々の紅葉がより強く発色の度を強めている。だが少々度が過ぎた感がなくもない。もう少し濃度を下げた方が秋の澄んだ大気の中にのび上がる富士山がすっきりと浮かんだろうと思う。これはPLフィルターを使用したがためのちょっとしたミスであり、秋の澄んだ大気はフィルター(UV)で充分表現できるものである。とにかく秋の作品は爽やかな表現が望ましい。
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入選 |
尾 総一郎 |
百蔵山 |
富士松風 |
東京都目黒区 |
典形的に画面が4分割された画面であり、あまりにも画一的になってしまった。こうした場合、もっと右手のマツの木に近づき、幹を太く入れこむことが望ましい。富士山も上下二分した中心に置かず、上下どちらかに寄せる必要がある。若しくはもっとマツの枝を入れこみ、富士山を下方に置く、といった手法も考えてよい。構図の性格上、少々画面が散漫になってしまった。 |
入選 |
福井 一夫 |
岩殿山 |
紺碧の空春爛漫 |
埼玉県狭山市 |
特選の雪の作品と同じ構成であり、雪のかわりにサクラが配されている。少々残念なのは画調の青が強すぎて、サクラの花色が本来の色彩でなくなったことだ。それと上方の枝はどっちかというと不要であり、下方の花びらふたつで、うまく横位置とした方がすっきりとし、また豪華になる。モチーフをなるべく多く取り入れようとするのはわかるが、あまり多いと、少なくとも、より以上の作品となることも少ない。 |
入選 |
出山 茂雄 |
お伊勢山 |
積雪輝く |
大阪府吹田市 |
この作品が非常に惜しい、と思われるのはやはりモチーフの構成上、ゆとりがありすぎるからである。まず下方の黒い山体のため画面が重く暗くなり、上空の散漫さが作品の力を弱めている。“全く惜しい”と思わせる作品で、選者が参考線を入れたが、このようにすると推薦も夢でなかった。しかし、ただ切るだけでなく、ちゃんと法則に則った切り方でないとかえって駄目となる。 |
入選 |
愛澤 和弘 |
高畑山 |
予感 |
埼玉県所沢市 |
倉岳山同様、高畑山も倒木があったり、薄汚く、茂みがあって、仲々作品になりにくい展望台である。ところが今回、その高畑山でいままでに珍しい作品が出品された。実にうまく、ヤブや倒木をかくしての作品であり、その苦労やさぞ、と感じられるものだった。しかし選者の採点はきびしく、入賞に止まり、その上、トリミングまで付いた。次回からぜひ参考に。 |
入選 |
福井 一夫 |
倉岳山 |
静かに明ける |
埼玉県狭山市 |
下方から樹々の梢がのびてきているこの山からの撮影としては、やはり富士山をアップにして樹枝を画面から外す以外方法はない。ただ、アップにしたのは良いが、多分カメラブレと思う結果が見え、ピントが悪い。ハッセル・ブラッド、ゾナー250_のレンズを使用していて、この結果とは、少々情けないといわざるを得ない。基本をしっかり身につけての結果を以って応募して欲しい。 |
入選 |
村上 敏幸 |
九鬼山 |
朝霧漂う |
山梨県富士吉田市 |
暫くぶりで九鬼山からの作品に美しい上質のものが出品された。この山頂はヒノキの植林地であり、その木丈がのびるにしたがって撮影が困難になっていたのだか、やはり工夫によってすばらしいものが撮影できるのだと再確認させられた。暗い朝もやの上にすっきりと白雪を輝かせて立つ富士、神々しいまでの美である。ただひとつ、富士山が中心にありすぎ、動きのないのが残念だ。 |
入選 |
三浦 明 |
御前山 |
静かな冬の朝 |
東京都立川市 |
白雪の輝やきが冴えないのが残念に思われる作品。こうした点はやはり露光値の正確さが仕上げに大きく影響することを心得ていないとうまく行かない。それに印画引伸しの際の露光オーバーも考えられる。フィルムをみていないのでハッキリした理由は不明だが、折角の作品がちょっとしたことから格下げになってしまうのに注意しよう。富士山頂が少し右に傾いていることにも留意したい。 |
入選 |
村上 敏幸 |
高川山 |
絹雲たなびく |
山梨県大月市 |
これまた画調が少し暗い。そのため雲も富士もすっきりと浮き出してこない。また、たなびく、という形容詞はこうした形状の雲にあてはまらない。ものごと、状態を的確に表現することは非常にむずかしく、ために意図したことが見る人たちに伝わらない。折角の作品も、調子や題名でまったく異なる意味にとられることを考えたい。たとえばこの作品は「爽やかに富士明ける」だけでよい。 |
入選 |
橋 照雄 |
本社ヶ丸 |
碧空 |
千葉県千葉市 |
これまた題名と作品の表現が正反対のものとなっている。題名どおりであるなら、もっと空部を大きく、爽やかに表現しなければならないのに、ここでは空部はせまく、逆に下部の暗い部分が主体となっている。さらにこの部分に写り込んでいるモチーフも黒くつぶれてしまって、これまた題名とつながらないわけだから、何を表現しようとしたか、全く不明になってしまう。テーマを明確に。 |
入選 |
纐纈 麻實 |
清八山 |
夏富士高く |
岐阜県多治見市 |
この山からのアングルは横位置構図が断然多いが、それはその方が撮りやすいから、といえる。しかし、前景を入れ込む場合、どうしても、前景と富士山の間隔が詰まる。そのため、富士山の高さが減殺されるきらいがある。この作品は、そこを逆に縦位置としたため、前景と富士山の間隔が離れ、富士山の高さがグンと増した。ほんのちょっとしたことで、写真というものは大きく変わるものである。 |