第17回秀麗富嶽十二景写真コンテスト
産業観光課 観光担当

第17回写真コンテスト最優秀作品「雪後の朝」

最優秀賞作品
作品名 「雪後の朝」
撮影場所 清八山
撮影者 内藤均

写真から読み込んでいますので作者の表現とは異なる場合があります。

賞名 氏名 山頂名 題名 住所 講評
最優秀賞 内藤均 清八山 雪後の朝 山梨県南アルプス市  
 小さな山頂、富士山も狭められた谷間の樹間にようやく、といった感じでのぞく清八山の表現はなかなかに難しい。その限られた条件の中で新雪も踏まず、周囲の情景を生かしてまとめた技量はなかなかのものである。雪後の静かな朝、風もない中のうっすらとした陽光が雪面のデリケートな質感を如実に表現している。煩雑なモチーフ、ことに富士山上の黒いマツの枝がじゃまだが、ポジションを低くしてその面積を押さえたこと、大絞りで被写界深度を深めた前景と富士山のピントの深さ、そうしたことが栄冠につながったものといえる。

 
推薦 大戸康世 扇山 川霧流れる 山梨県大月市  
 非常に美しい富士山である。山体への雪の付き方、中間の雲の流れ、調子は完全に近く、最高の条件を最高の瞬間に捉えた秀作といってよい。やや雲の塊が中心部に片寄りすぎているきらいが気になるが、そのほかの下界の街並のかくし方、天部の空きもよく、富士山の高さを十二分に表現している。山頂がやや中心線に近すぎるが、さほどでもなく、シャッターチャンスによって富士山の色相も上乗の発色といえる。ちょっと気になるのは題名で、これは川霧ではなく、浮遊する雲塊なので別の表現がほしい。

推薦 奈木正次 大蔵高丸 紅雲流る 静岡県裾野市
 これまた非常に美しい調子で、紅が強いためにより目立つ。どこから見ても富士山は美しいが、それをより美しく撮り止めるのが技術であり、対象に対する愛である。また技術は単に露出値やカメラに関したものでなく、人間の美意識が実際の物体より、さらに美しく画面中に取り込む、つまり構図である。この作品は、美しく焼けた雲に、光は小さくとも富士がそれをしっかりと支えている。単純なだけにより強い美が人の心を打つ。


特選 高宮徹 岩殿山 いまぞ明けゆく 東京都港区  
 長時間露光のため、やや相反則不軌発色となっているが、不自然でなく、より朝の感じを表現し得た。あまり長時間露光をすると画面にカブリが出て、ベタつき、コントラストに欠ける。そうした傾向が若干あるが、バランスがとれているので気にならない。富士山を思い切り長焦点レンズで引っ張り、大月の市街を切り捨てたことによって壮大な朝の情景が再現された。改めて富士山の美しさが見る人の心を打つ。

特選 谷口一只 お伊勢山 春爛漫 埼玉県加須市  
 まことに春らしい美しい日和りである。うっすらとヴェールがかかった春の空、これがあまりにも晴れ上がって濃い青となると春らしくなくなる。サクラの花どきになるとよくしたもので、たいてい雪が降って富士山の化粧直しをしてくれる。まったく日本の四季はよくできているが、それを表現するのはなかなか難しい。花の入れ込み量、富士山の大きさ、非の打ちどころが無い、といいたいが、サクラの花と富士山の距離が測りきれなかったか、花が少し後ピン、つまりほんの少しピントが甘いのは残念。

特選 内藤元次 百蔵山 雪晴れの朝 山梨県大月市  
 典型的な「いの字構図」、いや「逆いの字構図」であり、ほとんど弱点が見られない。これで右方半分の雪をかぶった林が黒木の森で、それにびっしりと雪が付いていたら、今回の順位はどうなったろうか。ただ、全体に光がまわりすぎて神秘性が薄れたことが惜しい。もう少し早い時間帯に撮影したならば、おそらく滅多にない好条件だったろうと思う。そうしたときのため、日の出から待機して連続的にシャッターを切ることをおすすめする。

入選 村上敏幸 雁ヶ腹摺山 荘厳の夜明け 山梨県大月市  
 残念ながら夜明けの時間帯は、すでに過ぎ去ってしまい、朝だが早朝の時間帯になってしまっている。したがって題名は「荘厳の夜明け」でなく、「美しき朝のもとに」といったものの方がぴったりする。そして、実際に上空いっぱいにひろがった雲は冬にはあまり見られない秋雲の美しさである。構図は完璧といってよく、題名で一段格下になってしまったわけで残念だ。題名は時間帯、光の当たり方、全体の印象で決定するのが望ましく、またことばもよく選んだ方がよい。

入選 長谷川政雄 姥子山 新緑と雲 山梨県大月市  
 これまた題名はぴったりしない。新緑はそのままでよいが、「・・・雲」はいけない。題名に必要なモチーフをどれにするかは迷うことが多いが、何といっても目立つもの、美しいものといった性格付けが最優先である。この作品の場合、雲は晩春・初夏にふさわしい形とひろがりがない。むしろ、「新緑風に揺れて春雪の富士」などはどうだろう。いかにも季節が感じられ新緑と富士、双方がぴったりと合ってくるはずだ。若干、新緑を多く入れ込んだ方がさらによくなる。

入選 内藤均 小金沢山 色付く頂 山梨県南アルプス市  
 小金沢山の頂きが色付いているのか?それとも富士山か?こうした場合、主語の頂きは富士山ということになる。だから「色付く頂きから」としなければ意味は通じない。構図的にはやや繁雑すぎるので、左方と下方をともに4分ノ1ほどカット、上をほんの少し切るとずっとさわやかな秋の季節感が出て、写真も一段とよくなる。自分の作品なのだから、自分でよく考えて構図を決め、撮影時に無理ならあとでじっくりと時間をかけてトリミングすることが大切。

入選 三浦明 牛奥ノ雁ヶ腹摺り山 秋雲の彼方に 東京都立川市  
 美しい秋の雲を富士山に配しての構図はよく使われるもので、実に爽やかな印象をあたえる。ただ、上空高い雲は正しく秋雲であるが、下方の雲はどんよりとして、あたかも春のどんよりした大気を思わせる。それと「秋雲の彼方に」では富士山が隅っこに追いやられた形の構図はふさわしくない。いっそのこと「秋空のもとに」とした方がよい。そうすると下方のどんよりした雲もあまり気にならなくなる。こうした組み替えもひとつのテクニックなのである。

入選 権正光夫 大蔵高丸 みつばつつじと富士 山梨県富士吉田市  
 花はほぼ満開、気持ちよく晴れた初夏の日、こうしたすばらしい山頂に立つとき、人はこの世に生まれた幸せを心から感謝する。だが、写真となると、一見、何の欠点もないように見えても必ず不備なところがあるものだ。それは周囲の美しい景観や花々、富士山に幻惑されて、ふだん考えている表現の何分ノ一も達成できないからだ。花の位置、ひろがりは万点、だが、富士山を写す時間的な不具合、富士山の向きと位置に難がある。もう少し富士山を右に寄せ、時間帯も早くすべきだった。

入選 大内京子 ハマイバ丸 秋煌 千葉県我孫子市  
 この作者はときどき奇妙な造語を使用するくせがあり面喰らう。煌という字はかがやくという意があり、またかがやいて明らかなさま、の意も持つ。したがってこの作品は秋のかがやきを意味するが、本来は月光とか星の光やホタルの光を形容するのに使用することばだ。この場合、富士山の白雪が光っていることか、手前のカンバ林の幹のことだろうが、それにしても偏光使用でかがやきを弱めた意味が不明だ。題名はひとりよがりでなく、万人に理解できるものを使用すべきである。全体の構図調子は上乗。

入選 小谷哲朗 滝子山 旭日に映えて 三重県松坂市  
 十二景中、最も撮影しにくく、苦労多いのが、まず滝子山、次いで牛奥ノ雁ヶ腹摺山であろう。今回は1点が笹子雁ヶ腹摺山と高畑山、2点が小金沢山、3点がこの滝子山応募僅少であった。撮り難いというのは登りがキツイこと、手前に三ッ峠山の尾根が入ることだが、この作品はそのふたつの難点をみごとクリアーしている。厳冬の1月下旬に登ったというが、おそらく他に誰も登ってはいないと思われる。その熱意と執念が、みごと結実した秀作であり、難点を見つけることができない。山の展望そのものの地味さで大きく損をした作品である。

入選 愛澤和弘 笹子雁ヶ腹摺山 朝日に染まる 埼玉県所沢市  
 この山頂は前方の稜線に送電鉄塔が何本も架設されていて、ポジションをとるのが難しい。作者はそれをうまくクリアーしているが、その技法としてクローズアップと下部をつぶすことで成功した。ただ、ちょっと残念な点は、富士山頂の上空が少し空きすぎたことでその分富士山の印象が弱く小さくなった。どうせなら思い切ってさらにアップにし、上下左右を詰めればより壮大な景観となったろう。フレーミング、トリミングは大胆細心ということを忘れずに。

入選 津秀俊 奈良倉山 幽玄の夜明け 山梨県大月市  
 奈良倉山は富士山に対して遠い上、標高もさほど高くないので、他に比してやや不利な撮影地であるが、富士山の形から見ると、他の山頂にくらべて決してひけをとらない。長焦点レンズの利用によっては他で得られない美しい角度がある。この作品は645判に300ミリのレンズを使い、日の出寸前の富士山を幻想美として表現した。最近の夜景やそれに類した作品に夜景なのにまっ昼間みたいな作品が多い中、これは秀逸といえる調子をあらわしている。流石は最高賞作家だけあるとうなずけるものだ。ただ、上部が少し広すぎる。
入選 坂井康朗 扇山 秋彩の朝 東京都練馬区  
 扇山は百蔵山より高さはあるが、どうしても前山が重なり、富士山の半分をかくすので誰しも撮りにくいという。この作品は珍しく紅葉の候のもので、手前の紅葉が明るく、中間部の谷間の空間にヘイズが入ったため、前山があまり気にならない。それに最近の富士山には稀な秋口に新雪が訪れたので、非常にクリアーな調子となった。11月の何日か、日が記入してないのはいただけない。こういう不実記載は、本来没となるものであることをよく覚えておいて欲しい。

入選 伊藤恵子 百蔵山 朝靄の上に聳ゆ 東京都大田区  
 この場合、題の起こりは朝靄でもよく、前山でもよい。だが、ちょっとひねって「山波の上の朝」といった表現も洒落ている。あまり現象にとらわれず、感覚で感じをつかみとることも大切。前山の重なり合う感じ、その狭間に浮遊する朝霧(これは霧であって靄ではない)、富士山の赤熱、全体の調子、よくととのっている。惜しむらくは右下部の紅葉のひと群と、手前の霧中に見える送電塔、これが無ければ文句なく上位進出となったと思うと、本人でなくともまことに残念!

入選 大戸康世 岩殿山 冬の華 山梨県大月市  
 珍しく大月に雪が降った。選者が子供のころはひと冬に何度も、その度少なくて30センチ、多ければ50センチ近くも積った。こうしたチャンスをうまく捉えて登り、それを捉えるのは、よほど骨惜しみしない人でないとできない。陽が翳っているといっても、雪の付いた樹枝で街並をかくし、その上に朝富士を載せ、全体を冷調に仕上げることによって、冬の朝を強調した。今回は2点入賞となったが、それもこの熱心さを思えばむべなるかなである。

入選 纐纈浩恭 お伊勢山 晩秋 岐阜県多治見市  
 「晩秋」という淋しい題に比較して、とても力強い作品に思える。これは手前左方の遅い紅葉はともかく、富士山がアップなこと、そこにからむ雲に勢いがあること、全体の調子が濃いため、晩秋の透明な空気感に乏しいからでもある。こうした場合、「秋到れど、冬いまだ遠し」調にするとぴったりする。常にいうことだが作品はそのときの季節に左右されず、作品の本質を探って、そこからえぐり出すもので、題名だからといって安易につけてはいけない。

入選 松本邦弘 倉岳山 薄紅色に染まる 埼玉県入間市  撮り難い山頂でようやくものにした作品、題名を付けるのに悩む気持ちはわかるが、これではあまりに安易すぎると思う。第一、何が薄紅に染まるか不明である。この場合、空の雲であろうが、主体は富士山である。せめて「薄紅の空に富士静もる」とでもしたい。もう少し下を切り空を広くとることによって、この感じはより強調されてくる。または150ミリくらいのレンズで、空部の左方も広く取り入れて、下部を切る範囲は250ミリと同様にするとより静かな朝富士となろう

入選 帯金晃 高畑山 夜明けに雲たなびく 静岡県沼津市  
 これまた評ができないほど陳腐な題名であり、どうしてこんな発想をするのか、理解に苦しむ。単に現象を羅列するのでなく、その現象からポエム(詩)を探し当てることに努めたい。これなどはただ「静寂の朝」でも「静寂の夜明け」でもいい。富士山頂の光も少しで淡く、上空の雲も細く淡い。すべてが静か、という印象に通じていることを考えればおのずと題名も定まってくる。一度で決めずに、何度も反復推敲して、自分でこれぞという題をつかみとることを練習すべし。

入選 谷ア耕史 九鬼山 白雲湧き立つ 大阪府大東市  
 惜しむらくは、この作品が夏に撮られたとしたら、このように淡い調子でなく、もっとコントラストがついた強烈な個性を持つ作品になったと考えるとまことに残念だ。11月でありながらヘイズが立ちこめて、気温は高く、したがって秋には通常出ない形の雲まで湧いてしまった。ヘイズ、冠雪、白雲の三拍子ではどうしてもメリハリのない調子となる。切り取り方は申し分ないのに、天が作者に味方をしなかった故の結果であった。ぜひ次回にがん張って下さるように。

入選 山崎勝孝 高川山 静かに明ける 神奈川県藤沢市  
 非常に好条件な朝であり、その好条件を十二分に生かした撮影だったといいたい。惜しむらくは105ミリでなく、200ミリ前後にのばして撮影していたなら、もっと迫力ある作品となったろう。アマチュアの方はどうしてもシャッター時というか、作画の際、臆病になって思いを切ったことができない。ここはもっとアップにして、題名も「あかあかと明ける」と「あ」を連ねて心理的にも強調すべきだった。いつも注意するように、あらゆる工夫をして数多くシャッターを切ることが第一。

入選 宮地広之 本社ヶ丸 雲わき立つ朝 東京都世田谷区
 どうしてこんな小さな雲を見て、「雲わき立つ」などいえるのか理解できない。それともこれから雲が大きく湧き立つことを予想しての題名なのかわからないが・・・。作品としては富士山に力があり、画調も悪くない。シャッターチャンスも良好であるが、この左下方の小さな雲が、折角の作品にそぐわない。やはり、こうしたことは全体のモチーフを見合わせるしかない。雲の出る前か、雲がもっと発達するのを待ってのチャンスを生かすべきであった。

入選 福井一夫 清八山 紅色に染まる。 埼玉県狭山市
 山崎勝孝、宮地広之の両氏と非常によく似た撮り方であるが、山崎氏はもっともオーソドックスだが、作品的にやや弱く、宮地氏の作品は一番整っているが調子が弱い。その点、この作品は調子も強く、しかも山頂を思い切って右に寄せたことが動きを呼んで力強い。またこの3点作品に共通することは、富士山頂の上空が広すぎることで、それで富士山の日本一の高さが減少してしまっている。作品はホンのちょっとしたことで良くも悪くもなる。他と比較し、自分の作品を推敲して、つねに最善の結果を求めることに尽きる。


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