第16回秀麗富嶽十二景写真コンテスト
産業観光課 観光担当



最優秀作品 「朝霧の詩」 牛奥ノ雁ヶ腹摺山  高橋英子 

写真から読み込んでいますので作者の表現とは異なる場合があります。

賞名 氏名 山頂名 題名 住所 講評
最優秀賞 高橋英子 牛奥ノ雁ヶ腹摺山 朝霧の詩 東京都大田区  
 十二景山頂中、小金沢と並んで、もっとも不便な山域からの展望。雁ヶ腹摺山からの富士山が、十二単衣の富士と呼ばれ、前景の山ひだの数によって、いかにも深山からの富士山と称されるのと同様に、この牛奥ノ雁ヶ腹摺山もそれに劣らず山深い。しかし、前景となる山ひだは、すぐ前に盛り上がる黒岳のためさえぎられている。この作品はそれに代るものとして朝霧を用いた。黒岳山につづく山腹に漂よい流れる朝霧によってデリケートな調子で何ともいえない不思議なムードをかもし出している。うっすらと色づく朝空に端坐する富士山は、さながら墨絵を思わせる幽幻さをたたえている

 
推薦 小谷 哲朗 百蔵山 雲乱れ飛ぶ朝 三重県松坂市  
 たかだか1000メートルの百蔵山からの富士山とは思えない高度感の表現がすばらしい。富士山の雪肌に当たった陽が、色あせたてからのシャッターチャンスであるが、そのため雪肌と雲とに適度の明暗コントラストが生じた。「雲乱れ・・・」とういう表現は雲の動きがおとなしく、あまり適切ではないが、画面の美しさがそれを補って効果をあげている。欲をいえば、中間の集落が雲でかくれ、右下方にも雲があると申し分ない。とはいえ、なかなか好作をものにできにくい百蔵山の富士山としては出色の出来だといえよう。

推薦 奈木 正次 大蔵高丸 薄紅に
明ける
静岡県沼津市
 何ともいえぬ幽玄さをたたえた富士の夜明けである。題名があまり端的で少々つまらない気がする。ここはやはり「幽玄の夜明け」とか「日本の朝」というようなポエムが欲しい。しかし何といっても、過去、5回の最優秀賞を獲得した実力は他の追随を許さない。画面下部から中間部へと移行する微妙な調子は、上部に君臨する朝焼けの富士の柔らかな色づきとあいまって、これぞ“富士”ともいうべき端正さに満ちている。最優秀賞の「朝霧の詩」とはまた異なる心象的表現は作者独特の持ち味といえる。


特選 天野 昭吾 奈良倉山 きさらぎの空薄紅雲流れる 山梨県大月市  
 奈良倉山から長焦点レンズで拡大した富士山。富士山四合目あたりまでもやがあったが上方の大気がクリアーだったため、コントラストが付いて強い表現となった。ただ、左上方の雲と下方の薄雲とのバランスが悪く、上方がやや重い。朝焼けの色相も若干、最高潮時を逸しているため、後半の色付き、橙々色となったのは残念。苦言をもうひとつ、題名があまりにも長く、冗長であるとともにその雲の動きが題名の表現にそぐわない。それとレンズの焦点距離の記入がない。こしたことは規則であり、厳守しなければならない。

特選 大戸 康世 雁ヶ腹摺山 ミツバツツジ咲く 山梨県大月市  
 右下方からでたトウゴクミツバツツジの花枝が、左上方の富士山にそろってのび上がっている。モチーフがやや画面中心に集まりすぎているきらいがあるが、まずまず美しい作品といってよい。これでカメラがほんのもう少し左方に位置していたら申し分なかった。しかし、花の開花状態、富士山の残雪の量、多少あったもやも画面の単純化を助けている。やはり地元の利ということは大きいと思うが、それにも本人の努力の方が大きい。いままでの花と富士山の組み合わせ中、上位にランクされるものと考える。

特選 夏目 政俊 大蔵高丸 樹氷の朝 愛知県豊橋市  
 樹氷ではなく、この状態は霧氷という。それに作者のデータ記入では大倉高丸とあった。これも注意すべきことである。美しい樹氷に飾られた稜線からの富士山、まったく申し分ない状態といえるが、惜しむらくは左方大谷ヶ丸の山頂が富士の裾引くラインを止めるような位置にある。それと右手の霧氷と樹林の調子と富士山の雪が飛んでしまっていて画面全体がかるくなってしまっている。左方を切り、全体の色彩濃度を上げることが今後の課題となろう。

入選 愛澤 和弘 百蔵山 雲表の妖雲 埼玉県所沢市  
 何となくおかしな感じがしたのは、「雲表の妖雲」と雲が重なったためだろう。雲表といえば雲海の上面をいうが、ここではただ薄くたなびいた雲で雲海ではない。上方に幾筋かある雲は、まあ妖雲でも差し支えないが、もう少し題名は考えた方がよい。全体にマゼンタがかぶっているため、色調が不自然なこと、上空が少し空きすぎるなど考える点がある。ただ、うまく落ち着いた構図になっているが、上方にもっと雲が欲しい。

入選 池田 浩樹 滝子山 山頂の春 山梨県大月市  
 全体的にきゅうくつさが見えるのが残念。これは画面全体の濃度が高すぎ(濃いということ)ることと、ツツジの花が画面下方に位置しすぎていることからである。この第一の濃度の点はラボの貴任もあるが、作者はこうした点も指示が必要である。第二の点はカメラポジションを少し下げれば解決する。写真は難しいようで、実際はさほどでもない。要は作者がもっと柔軟な考えをもつこと、それがすべてに通ずるのである。

入選 伊藤 恵子 お伊勢山 桜花咲く 東京都大田区  
 サクラと富士、これこそ日本を代表する風物といえよう。このふたつが合するとき、私たちは日本に生まれたことの幸せを心から感ずる。たわわに花をつけたサクラ、春雪をたっぷりとまとった富士山。しかし、この組み合わせはまことに難しい。俗に落ちず、華美と孤高の組み合わせをどうするか。それには量と入れこみ方、富士山の花に対する大きさと全体のピントである。また、この作品は左方が少し空きすぎ、富士山が少し傾いている。まずそれを是正しよう。

入選 大内 京子 牛奥ノ雁ヶ腹摺り山 黎明 千葉県我孫子市  
 最優秀賞作品と同一の場所、条件、時間帯もほとんど同じである。これを最優秀作品と比較対照してみると、まず気付くことは手前の山肌にからまる朝霧である。霧の位置、動きが明らかに異なり、手前の山肌が、この作品では暗部が多い。題名は「黎明」と明け行く状況を表現したが、その場合は中間部分までは必要なかった。上部のみでまとめるとまた、おのずと違った作品となったろう。ここに表現の厳しさがある。右端から富士山頂までの3分ノ1、上下の半分、左方を少し切って上部にのばすことが必要。

入選 帯金 晃 奈良蔵山 朝日に染まる 静岡県沼津市  
 冬とはいえ、近年暖冬のため大気中にもやが多く富士山撮影には仲々に苦労する。だが、この作品にはそのもやをうまく利用して実に美しい表現に成功した。これには前夜降った雪が大いにあずかっていて、全体を淡い蒼の色調でまとめることが容易であったこと、上空と富士山の色づきが画然と分けられたためである。上下の割合も、全体のバランスも良く、ほぼ100パーセント条件を生かし切れた。ただ「朝日に染まる」の題名は「雪後の朝、富士より明ける」的なものの方がふさわしい。

入選 岸野 景佐夫 奈良蔵山 荒荒しい富士 埼玉県上尾市  
 やや上空が空きすぎではがあるが、題名そのものの荒々しい富士山ではある。ことに左上方に千切れそうにのびる雲が生きている。光の状態も立体的ではなかなか良い。しかし、これらすべてを生かせないのは、全体にピントが悪いことである。データを見ると35ミリ判にズーム70〜200ミリをつけ、200ミリ+テレコンバーター使用とある。これでは折角の作品も下位に甘んじるほかはない。ピントさえよければと、まことに残念に思う。

入選 纐纈 浩恭 高川山 冬晴れ 岐阜県多治見市  
 富士の雪肌に雪煙が巻くだけで、空には一片の雲もない。まさに冬晴れであるが、少々単調さがぬぐえない。こうした場合、思い切って周囲をトリミング、富士山の山体を大きく、どっかりと画面に置きたい。この作品のように周囲すべてが同色でかこまれていると、富士山が心理的にもより小さく見えることになる。それを打破するには、四囲のどこかに突破口を作るしかない。そうすると「冬晴れ」という題名も生きてこよう。長焦点、望遠レンズの乱用は不可だが、たまには慣習を破ることをおこなうも必要である。

入選 坂本 恒義 九鬼山 堂々 神奈川県
相模原市
 
 あまりに綺麗に撮りすぎたため、堂々とした感じが薄らいでしまうことがよくある。この作者も富士山に正対して、富士山に圧倒された心情からの題名だろうが、ここはもう少し大きく、少なくともこの倍くらいの大きさがふさわしい。645判で420ミリレンズというが、富士山は近いように見えるのは心情的にそう感ずるからで、実際は意外に遠い。ピントは良好なのでもっと引き伸ばしで大きくするも一法である。画調も今一歩、もっと雪の調子を出したい。

入選 佐藤 義雄 高畑山 晩春の富士 山梨県都留市  
 晩春ということばには爛熟という意味が含まれることがある。だが、この緑には初夏という言葉こそふさわしい。それにべっとりと雪をつけた富士はまだ浅春の姿であって、高所と下界の季節の進行の違いはなかなか一致しない。この作品は画調のコントラストが極端で、新緑は暗く、逆に富士の新雪は調子も何もなく飛んでしまっている。ラボによって画調は異なるので、自分の作品にあったラボを探すことが大切。左方の樹林が混みすぎてより重くなっている。
入選 瀬沼 茂雄 ハマイバ 初夏の
破魔射場
東京都福生市  
 特選の「ミツバツツジ咲く」の作品と同様の構図。ただし、こちらは白花で、左からのび上がった枝先の白花上に富士山がある。左右が逆だけの構成であり、こちらの富士山の方が大きく写し込まれている。ここで残念なのは白花が少しピントが悪いこと、それと富士山もピントが届ききっていない。つまり、好条件を生かし切れていないといえる。どちらかというと後方にピントが合う、いわゆる後(あと)ピンなのである。写真は一枚一枚全身全霊を込めてシャッターを切りたい。

入選 高津 秀俊 姥子山 晩秋 山梨県大月市  
 色つき終わった葉が枝先に付いた樹林、富士山の新雪、秋雲。まさしく秋の光景であるが、ちょっと考えすぎであり、題名がイージーにすぎる。晩秋と題するには枝先きの葉がすべて、またはほとんど落ちていることが必要である。この場合、題名は「深まり行く秋」とでもすればぴったりとなる。また画面の調子が暗すぎて、秋の透明感に乏しい。右方を少し、下部を5分ノ1、左方を4分ノ1ほど切って構成するとずっと明るく、秋らしいものとなったろう。

入選 高橋 利延 岩殿山 降雪やんで新雪の華 神奈川県
相模原市
 
 これも題名がくどいと思う。ここにも雪の字が重複しているが、ここはただ単に「新雪の華咲く上に」とか、「新雪樹々に咲く」と簡潔にまとめた方が効果的だ。作品は構図的にはうまくまとめてあるが、左方の山を半分ほど切った方が、より樹の雪も富士山も大きくなる。画調は美しく、いかにも清新な冬富士、といった表現になっている。樹枝の中央部の縦に直線的になった枝、それと右上方の湾曲した枝は整理したい。

入選 谷口 一只 本社ヶ丸 新雪の
彼方に
埼玉県加須市  
 こうした場合、新雪の彼方でなく、積雪の彼方となる。実際には新雪であっても、一部だけしか写り込んでいない。新雪は一面にあってこそ新雪で、それだからこそ新鮮で美しいものとなる。両面構成は上部が重く下が軽い上に左方が重い。これは左方の山肌の黒さが影響している。でき得れば少し後退してカメラポジションを下げ、雪面を大きく、山肌をかくして、富士をその上方に置きたい。さすればもっとどっしりとした構図の作品となったろう。

入選 内藤 均 大蔵高丸 モミジ色づく
上に
山梨県
南アルプス市
 
 ミネカエデの色づきは最高、富士山にも新雪がかかり、光線状態も横からで絶好の条件であるのに、それを生かし切れていない。まずモミジのピントはOK、しかし富士山にピントが届いていない。つまり、絞り値が浅いため、被写界深度が浅かったわけだ。モミジにピントを合わせ、絞値11くらいで充分全体にピントが合うはずである。それと画面の四方すべて(富士山上空半分位、他も同様)カットしたら、実にスッキリした作品になったろう。

入選 福井一夫 清八山 荘厳 埼玉県狭山市  
 風は強いがよく晴れた冬の朝、くっきりとそびえる富士山には冒しがたい威厳がある。それをどのように表現するかにまた作者は悩むのであるが、ことばの意味を取り違えると表現も異なってくる。荘厳の意にはおごそかで堂々とした、さらには立派といったことだが、そうだとしたら、もっと大きく撮り込むことが必要ではなかったか、選者はそのように考える。実際にももっとアップにした方がインパクトも強烈なものとなったろうと惜しまれるところである。

入選 松本邦弘 倉岳山 川霧静かに 埼玉県入間市  
 川霧はどこにあるのだろう、そう思って探してみた。右下方に少し白いものがあり、それがそうだと思うしかないようだ。これではあまりに画面とそぐわない。選者ならば「天地、いま目覚める」的なものとするだろう。そうしないと、富士山の色づきはともかく、手前の山や谷はただ単なる黒いマッスとしか見えない。高所(天)にある富士山に陽があたり、地の胎動が霧を生む。そうした心理的な解釈に持って行くと、この作品もまんざら捨てたものではない。もう少し下部の調子を薄くすると良い。

入選 宮地広之 扇山 新雪の朝 東京都世田谷区  
 滝子山の作品同様、少々きゅうくつな感じが拭えない。これも雪の付いた木々の梢が中途半端に入りこんでいるからで、もっと整理して形よく入れこんだ方がよい。それとそれがため、中間の山地が多く写り込んでしまい、そこ一帯が間のびしたこともある。この山地の中間調を雪の付いた樹々の梢でうまくかくすことが必要で、こうしたことを画面構成、つまり構図というのである。富士山の感じはとても良いもので、もう少し、と惜しまれるところだ。

入選 村上敏幸 小金沢山 新緑の頃 山梨県大月市  
 地味な黒木の多い小金沢山からの前景、それを考慮しての季節に新緑の候を選んだことにまず感心する。黒木林といっても、その中には必ず幾分かは闊葉樹が混ざっているものだ。それが的を射て、明るい画面が得られた。ただ、それをもっと生かして構成したら、と思われるのは、手前の明るい葉むらを生かすことで、左方6分ノ1をカット、下方も同様に6分ノ1を切ってまとめると、グンと全体が生きてくる。発想はそれをさらに発達させてこそ成功する。

入選 八巻長子 笹子
雁ケ腹摺り山
師走の朝 山梨県中央市
 富士山に当る光の角度、上空の雲の色づきも良い。しかし、これは何も師走でなくとも撮れる条件。作品にそうした個人の感じた季節、撮影した季節がたとえそうであっても、見る人にはストレートに通じはしない。そうした理由から題名を付けるのはマイナス点が多い。全体は美しく仕上がっているが、残念なことに左方中央部の空きに加えて、右上方も物足りない。かえって富士山頂部と上空の雲のみでまとめたら良かったのではないか。


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